■プロローグ
季節は秋、木枯らしが吹き寂しさが募る季節。
紅葉が散り、冬に備える樹木が侘しさをより一層引き立てていた。
人々は雪に備えての準備をしており、うら淋しい雰囲気が村全体をおぼろげに包んでいる。
男は宿の予約をしていた。
バス停から宿に向かい、慣れ親しんだ門を通り部屋に行く。
そこには以前、会遇した女性が澄んだ空を窓越しにぼんやりと眺めていた。
【櫟】
「あら、ご予約の方は誰かと思いましたら……旦那さんでしたか。御無沙汰しております、櫟です。」
【櫟】
「忘れてはいませんよ。あの日のことは昨日の様に覚えています。本当ですよ? ……ふふっ、もちろん今……思い出しました」